婦人部の活性化をめざして

鴨川市漁業協同組合婦人部
  橋本 みつ子

1.地域と漁業の概要

 私たちの住む鴨川市は房総半島の太平洋岸南部に位置し,人口3万1千人の美しい海辺のまちです。鴨川市漁協の組合員数は491(正365・准126)名で,漁船隻数は 199隻です。主な漁業はまき網,定置網,小型船漁業で,平成7年度の水揚数量は8千トン,水揚金額は21億円でした。魚種別に多いものはイワシ,ブリ類,アジで,これらで総水揚量の85. 5%を占めています。

2.グループの組織

 鴨川市漁協婦人部は昭和32年2月18日に貯蓄運動組織として発足しました。当時の部員数は30名,「部長1名,副部長2名,会計1名,地区役員8名」という組織の構成は今も変わりませんが,現在の部員数は96名に増えており,平均年齢は55歳です。婦人部員の70%は漁家で,自船の水揚げの手伝いをするほか,漁協自営の定置の水揚げ時には漁獲物の選別(拾い出し)に駆けつけ,鴨川地区における漁業の重要な担い手になっています。

3.私たちの活動

☆産業まつり・自然まるかじり体験塾

 鴨川市の産業まつりは,鴨川の素晴らしさをより多くの人に知ってもらうために,昭和60年から毎年6月に開催されています。鴨川市漁協は,鴨川の海の幸をアピールするため第1回から参加し,新鮮なカツオやアジ,イナダなどを特別価格で販売して地元の人たちや観光客に大人気。いつもあっという間に売り切れてしまいます。私たち婦人部もわかめご飯のおにぎり,いわし団子汁や焼きそばを販売するなどして参加しています。 姉妹都市になっている東京都荒川区の「川の手まつり」(4月)へも昭和62年から参加し,鴨川で獲れたおいしいあじの干物などを販売して,鴨川の漁業を都会の人たちに知ってもらえるよう努力しています。
 夏休みには荒川区から子どもたち80名あまりが鴨川の海や山へ2泊3日の「自然まるかじり体験塾」にやって来ます。早朝,刺網からエビや魚を外させたり,イカやタチウオの干物作りなどを体験させます。「魚に触るのが初めて」という子供たちもいていつも大騒ぎですが,都会の子供たちと私たちとの楽しい交流です。きっとお互いに素晴らしい思い出になっていることでしょう。おなかをすかせた子供たちに海辺の朝ご飯(イソッピのみそ汁やわかめご飯)をごちそうしてあげることも婦人部の仕事です。



タチウオを3枚におろす


自分で開いたイカを干しながら昼食

☆「ながまた」の消費拡大に向けて

 みなさんは「ながまた」という海藻をご存知でしょうか?「ながまた」は標準和名を「コトジツノマタ」という紅藻で,太平洋沿岸北〜中部の潮間帯の岩上,波の当たる場所に生育します。千葉県でも,外房の海岸線で6〜7月に解禁となり採取され,乾燥させて製品とします。私たちの住む南房総ではながまたを食べる習慣はなく,これらの製品のほとんどが銚子・九十九里地域へ送られているようです。
 ところで,平成6年あたりから輸入の増加によりながまたの単価が下がり始め,売り先も減ってしまいました。鴨川市漁協のながまたの在庫が1トンもあるという状況になってしまいました。袋詰めにして販売しても,もともと食べる習慣がないのでさっぱり売れません。私たちの地域では「高血圧症に良いらしい」ということでながまたを煎じて飲むことがあるくらいでほとんど消費に結びつきません。
 しかし,今まで良い収入になっていたながまたをこのままにしておくわけにはいきません。私たち婦人部は漁協と相談してながまたの消費拡大に努めることにしました。
 平成7年6月には,鴨川市産業まつりで袋詰めを店頭に並べたところ,40袋売ることができました。ながまたが健康に良いと知っている人たちが買ってくれたのだと思います。



産業祭りで「ながまた」を販売

 平成8年4月には,荒川区「川の手まつり」でながまたで作ったゼリーを試食してもらいました。それがなかなか好評で,「どうやって作るのか」「これは売っていないのか」という声がとても多かったのです。試験的に持っていったながまた(200g入り)34袋も全部売り切れてしまいました。都会の人たちの意外な反響でした。
 また,鴨川市漁協が平成8年度にながまたの活性化事業に取り組むことになり,婦人部が料理部門を担当することになりました。
 いろいろな試作品はどれもおいしそうでしたが,寒天やゼラチンで固めたものに比べると,どうしてもくせがあって食べにくいという感想が大半でした。また,ながまたをほとんど知らなかった人たちは,煮ている時の匂いに辟易していました。ながまたは独特の匂いのある海藻なのです。さっと水に晒して再度乾燥させると匂いがほとんど気にならなくなることもわかりましたが,婦人部で検討したところ「栄養分が流れ出てしまうだろうから晒さないほうがいい」ということになり,匂いは我慢することになりました。
 たくさんの試作品ができましたが,自分たちだけでなくもっと大勢の人たちの知恵を借りたくて,鴨川地区漁協婦人部(和田町〜小湊の5漁協婦人部)連絡協議会の役員会の席上で「ながまた料理研修会」を提案したところ,他漁協の婦人部の方たちも興味を持って料理に挑戦して下さることになりました。
 平成8年7月10日,鴨川市漁協会議室に和田町〜小湊の5漁協婦人部25名が集まって研修会を開き,そこでながまた料理の交換・試食を行いました。水羊羹風のもの,エメラルド色のゼリー,刻んだパイナップルを入れて固めたもの,蜂蜜で甘くしたものなどたくさんのながまた料理が並び,それぞれの作り方を説明してもらい,試食して意見を交換し,たいへん勉強になりました。
 研修会で学んだことを参考に,婦人部ではながまた料理の試作を続け,ながまたの良さをより多くの人に知ってもらえるようパンフレットを作ることにしました。@ながまたようかんAながまた茶BヘルシーながまたサラダC海藻こんにゃくの作り方をパンフレットに載せましたのでぜひ作ってみて下さい。



サラダを作る


 このパンフレットは農協婦人部との交流会や地域のイベントなどにも活用したいと考えています。また,同時にながまた料理に関するアンケート調査も行い,これを参考に販路を拡大していきたいと思っています。
 ところで,今回のながまた料理のアイデアを出すに当たって私たちが特に感じたのは,若々しい新鮮な感覚もほしいということでした。若い人たちが婦人部に参加しやすい活動を考えなければいけないと思いました。

☆ボウリング大会

 こんな時,安房東部(和田〜小湊の5漁協)の青年部が鴨川でボウリング大会を開いたという話を耳にしました。以前は私たちも,青年部が開く運動会や綱引き大会に参加して一緒に大騒ぎしていたものです。「ボウリング大会を開けば若い人が参加して活性化を図れるかもしれない」という声が私たちの婦人部の中から上がり,さっそく鴨川地区漁協婦人部の役員会で提案したところ,全員に賛成してもらえました。それぞれの婦人部はできるだけ若い人たちを誘ってみることになりました。
 平成8年11月16日に鴨川のボウリング場で第1回鴨川地区漁協婦人部ボウリング大会が開かれました。参加者は応援団も含めて53名です。ボウルを持つのが初めてという人,15年ぶりに投げるという人などが和気あいあいと2時間あまりを楽しみ,役員会や研修会で顔を合わせただけでは味わえない親しみをお互いに感じることができました。直接婦人部に入ってない若い人たちも誘われて参加し,私たちの活動に興味を持ってくれたことが大きな収穫でした。私たちも体を動かして騒いだことでストレスがとれ,心身ともにリフレッシュできました。大成功!「年に2〜3回やりたい」「今度は青年部と合同でやりましょう」などの意見が出ています。

4.終わりに

 私たち婦人部は産業まつり,ながまた普及などの活動を行ってきましたが,参加者は固定化し,高齢化してきました。今後も活動を続けていくには,幅広い部員の確保と組織の強化をめざす必要があります。それにはボウリング大会のような若い部員の趣向に合った新しい活発な活動や,みんなが参加しやすい運動を展開して活性化を図ることが大切です。それによってこの海辺のまちを活気付かせ,豊かな明るい漁村作りを邁進するよう頑張りたいと思います。



参考資料:ながまたの食べ方

ながまた羊かん


ながまた30g

水1リットル
あん200g(市販のもの)

ながまた30g
水1リットル
フルーツ缶詰
砂糖100g

@軽く水洗いしたながまた50gを1リットルの水で炊き,沸騰後20分くらいかき混ぜて煮る。
Aあんを入れて,弱火で5分くらいよくかき混ぜる。
 (もしくは,缶詰のフルーツを入れて固める)
Bトレーに移して固まったら,食べやすい大きさに切る。

 

ながまた茶

 1リットルの水にながまたをひとつかみ(20〜30g)入れ,沸騰したら弱火にして5分くらい煮る。
 毎日続けてお飲みください。

 

ヘルシーながまたサラダ

材料(4〜5人前)

 ながまた30g
 きざんだ生野菜
 適当量ドレッシング適当量

@ながまた50gを沸騰したお湯で2分くらい(海藻の色が変わる迄)茹でる。
A茹でたながまたを冷水に取ってざるに揚げ,水を切る。
B生野菜と混ぜて,お好みのドレッシングで召し上がってください。


銚子・九十九里の伝統料理海藻こんにゃく

材料(4〜5人前)

ながまた30g
水1リットル
ゴボウ・ニンジンなど100g

@1リットルの水でながまた50gを水から炊き,沸騰後20分くらいかき混ぜて煮る。

A火を止めて60分くらい冷ます。

 (この時,刻んで茹でた好みの野菜を入れても良い)

Bトレーに移して2cmくらいの厚さで固める。

C固まったら食べやすい大きさに切る。

 青海苔,カツブシ等をかけて食べる。

注意;ながまたは,付着している石などを取り除いて軽く水洗いしてから使ってください。


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