漁師は、皆さんが知っているとおり大自然を相手に漁をします。穏やかな海は豊かな恵みを与えてくれますが、天候によっては一転して荒れ狂い、命を落とすこともある危険な海へと変わります。また、漁の良し悪しは、人の力が及ばない領域がほとんどであると言えます。そこで漁師町には操業の安全や大漁を願い、縁起を担ぐ多くの風習が、昔ながらに残っています。このページでは、その中のいくつかを紹介します。


勝浦市川津の初漁
(正月の行事)


 1月2日には勝浦市の各地区でノンゾメ(乗初め?)と言う行事が行われ、その内容は各地区で違うようです。川津では船の上から、もち、ミカン、お金などをまき、景気づけに漁をしている格好をしたり、漁をしていないのに「今日は大漁だ」などとみんなで話したりします。
 その後日、初めて船で港を出ることを初漁と言い、その日は一般的に知られている大安などの陰陽道ではなく、さらに細かく分かれている日蓮暦で良い日を探して決められます。
 初漁の中でも、一番先に港を出ることをナマキリと言い、ナマキリの船はその年、事故や怪我などの災いがあると言われ、漁師は忌み嫌います。そこで川津では、公平にくじ引きでナマキリ船を3隻決めます。
 ナマキリに決まった船には、初漁の日の朝、川津漁港のすぐ近くにある津慶寺(しんけいじ)の御前様(住職)がお経をあげ、操業の安全を祈祷します。普通、このような場合は神社の神主が御祓いをして災厄を除きますが、川津では、なぜか寺の住職がお経をあげます。
 いよいよナマキリに決まった3隻の出船です。しかしこの3隻はお経をあげてもらっていても、ナマキリの中のナマキリにはなりたくなく、港口でゆっくり前進したり、たまに後退したりしながら、互いに相手の出方を見ます。このようなやりとりが10分以上続いた後、我慢しきれなくなった船が渋々港から出て行きます。
 ナマキリ船が出た後は、待っていた船が一斉に出港します。出港前には大漁旗や国旗などで船は飾られていますが、風で切れてしまわないように、旗は降ろされる事が多いようです。
 ちなみに大漁旗や国旗などの正月の飾りは、前の年に不幸や出産があった船には飾らない事になっています。
 
 港を出た船が向かうのは、港を出てすぐの所で、そこはお経をあげた津慶寺の正面になります。その場所で船は反時計回りに3回まわり、お参りをします。3回まわった船上では、海水をバケツで汲んでまいたり、御神酒や米をまいたりして、その年の豊漁を祈願しながら、命を預ける船を清めます。
 

「きらっと千葉の漁師さん」ホームページへ